補助金の位置づけを明確にする
「こういう補助金があるんだけど何か使えないかな?」
「何か良さそうな補助金ない?」
ビジネスサポートを通してこのような声をよく耳にします。
補助金は手段であって目的ではない
借入と違って返済する必要がないため、補助金目当てになってしまう気持ちは分からないでもありません。
ただ、補助金が目的になってしまった瞬間に、事業の舵が思いもよらぬ方向に切られてしまう可能性もあることを十分に理解する必要があります。
資金調達方法の一つでありながら、借入などと違うのは、補助金の公募要領に準ずる取組をしなければならないという点を忘れてはいけません。
ついつい補助額の満額を狙いたくて補助金に合わせた事業計画を作ってしまうと、本当はやらなくても良い事に経営資源を投入することになります。
補助金の申請書を書くのも、補助事業を実施するのも、事業実施報告を行うのも決して楽なものではないからです。
給付金や助成金と異なるのは自己負担があることと、総事業費を一旦事業者が立替しなくてはならないことです。
例えば補助率が総事業費の2/3、補助上限100万円の補助金があるとします。
満額申請したならば、2/3で100万円なので、約150万円を一時的に負担する必要があります。
この150万円が本当にやりたいことであれば問題ありませんが、100万円の補助金を活用するために150万円相当の事業費を費やすということ自体不自然なことです。
逆に「もともと150万円掛けて実現したいことがあって、補助金を活用した結果、50万円の自己負担で済んだ」という流れが真っ当な補助金活用方法となります。
さらに「財務状況を考慮して2~3年後に実現したいと思っていることを前倒しで実現するチャンス」と捉えることができるなら大いに補助金を活用しましょう!と言えます。
補助額を侮るなかれ
数千万円~億の補助金はともかく、数十万円~数百万円の補助額を聞いて「額に対してこんなに苦労するのか…」と思う事もあるかもしれません。
「だったら同額の売上を作った方が早い」と。
よく考えてみてください。
補助金は運転資金ではなく、売上を伸ばすために行う新たな取組(投資)に対して補助してくれるものです。
・商品(サービス)開発
・ECサイト制作
・店舗改装
・専門家派遣
・新規設備導入
など、補助金の種類や性質によって出来ることは変わりますが、どれも共通しているのは「余剰資金がなければできない」ことです。
借入によって調達する他人資本はさておき、売上から原価を引いた粗利、粗利から人件費や地代、水道光熱費などの固定費(販管費)を差し引いて残るものがなければ新たな投資を検討する余地がありません。
営業利益(売上-原価-販管費)で考えてみます。営業利益を5%と仮定しましょう。
先ほどの例に習って150万円の総事業費に対し、2/3の100万円が補助金として充当されるとして、総事業費150万円の営業利益を出すには3,000万円の売上を作るのと同等(150万円÷5%=3,000万円)と捉えることができます。そのうち100万円の補助金が出るという事は売上2,000万円分を補填してくれるという考え方もできるのです。
企業規模にもよりますが、この考え方をすると「売上を作る方が早い」とはなかなか言えないものです。
補助金活用は「緊急ではないが重要なことに割く時間を確保」するチャンス
規模が小さいほど、社長=プレイヤーであることが多く、目の前の仕事に追われる仕事、つまり「緊急かつ重要」なことに時間を取られる日々を過ごすことになります。頭の中では「時間があればやりたいこと、やらなければならないこと」が巡っていても、いざ時間ができると普段の忙しさから休息や趣味などに使ってしまいがち。
ある意味、補助金は本来やるべき「社長業」を行う良い手段となります。理由は嫌でも以下のことを言語化する時間が必要になるからです。
・現在の事業概要整理
・既存顧客層と提供価値の整理
・自社の強み、弱み、外部環境の機会・脅威の分析(SWOT分析)
・市場(外部)環境分析(PEST分析)
・現状(定量的・定性的)分析
・財務分析
・新たな取組みの概要
・新たな取組みに活かせる強み、低減される弱み
・新たな取組みの実施体制
・新たな取組みによる3〜5ヵ年計画
・計画数値の根拠の洗い出し
・新たな取組みによってもたらされる効果
普段から自社分析や経営計画をして社内共有を図っている企業は別ですが、小規模事業者であるほど疎かになる部分ではないでしょうか。補助金を活用する事でこれらの事を強制的に言語化して実行することになります。
補助金の位置付けを明確にする事で、資金確保のほか、事業の前倒し、事業の見直しも可能となります。
目的と手段を履き違える事なく、適宜活用して「ありたい姿」を実現していきましょう!